RG MAGAZINE
2024年12月3日
松川 佳奈 | 寄稿者
MATSUKAWA, KANA | CONTRIBUTING WRITER
アルカンソー フェイエットビル | Fayetteville, Arkansas
「もう後には引けない」日本企業を辞めて大学院へ。日本人×アメリカ人カップルの結婚までの道のり
“I can’t turn back now.” I quit my job at a Japanese company and went to graduate school. The journey of a Japanese-American couple to marriage
日本の高校を卒業後すぐにアメリカの大学に進学し、2022年に卒業したまゆさん。大学で出会ったアメリカ人パートナーと結婚するため、2年間勤めた日本の企業を退職し今年8月、大学院生としてアメリカに戻りました。
現在は大学院に通いながらパートナーと2人暮らしでゆったりとした生活を送っており、これから入籍手続きを始めるそう。
今回は、パートナーとの出会いや婚約に至るまでの経緯を始め、異文化同士の楽しさや難しさ、また一筋縄ではいかないグリーンカード取得の流れまで、国際カップルのリアルをお話ししていただきます!
自己紹介
北海道出身で、高校卒業までは北海道に住んでいました。卒業後2017年にアーカンソー大学に進学し、学部ではインターナショナルスタディーズとアフリカン・アメリカンスタディーズをダブルメジャーとして専攻し、フランス語を副専攻していました。2021年12月に学部を卒業し、今年の8月から大学院で修士課程を始めました。現在は、マーケティングを専攻しています。
アメリカ大学に進学したきっかけ
留学にはずっといきたいと思っていました。地元の公立高校を卒業後「留学に行きたい」という思いがどんどん積もっていきアメリカの大学に進学することを決めました。
アーカンソー大学に決めた理由
もともと西海岸や東海岸の都会の大学は考えていませんでした。もちろんコスト面の理由もあるけど、何より「どうせなら絶対行かないような場所が良い」と思いアーカンソー大学を選びました。また、州内でもレベルの高い州立大学を探しており、国際関係学に強い大学ということでアーカンソー大学を選びました。
2人の馴れ初め
最初の出会いについて教えてください!
パートナーとの出会いは、大学でのパーティーです。私の同期がたまたまそのパーティーに弟を連れてきたのですが、それが現在のパートナーでした。当時、彼はまだ高校生だったので「友達の弟」という認識でしたが、その後彼が大学に入学し、日本語の授業を取り始め、宿題を手伝ううちに仲良くなりました。しかし、そのころコロナが流行り出して授業がオンラインになったり、私自身大学を休学して、1年間アメリカにいなかったりして、彼とは2年間会えない期間がありました。その後彼と再会したのは私が卒業前最後の学期です。たまたまキャンパスのバス停で会って話していたら、コントラバス奏者である彼が、ちょうど一緒に演奏するピアニストを探しているとのことで、私がピアニストを担当することになりました。それを機に、一緒に練習などするなかで、一気に距離が縮まったと思います。
どうやって付き合い始めましたか?
実際に付き合い始めたのは、私が大学を卒業して日本に帰国してからです。帰国後、彼とは朝晩ずっと電話をしていました。土日は6時間くらい話していたこともあり「もし遠距離じゃなかったら、もう普通に付き合っていてもおかしくないな」という距離感でした。けれど、今後どうなるかもわからないので、お互い関係を明確にせずただ仲良くしていた期間が長く続きました。
あるとき彼と電話中に当時の会社の同僚が乱入してきて、みんなでビデオ通話をする流れに。その同僚が彼に「彼女とかいるの?」と質問したら彼は「いるよ」と返事をしたのです。そのときは、まさか自分のことだとは思わなかったし、アメリカで彼女ができたのだと思っていました。その後、彼と2人で電話したときさりげなく「彼女いたの?」と聞いてみたら「(私のことを)彼女だよ」と言ったのです。そこで初めて、私たちは交際関係にあるのだと認識しました。もしあのとき同僚が乱入して彼に聞いてくれていなかったら、私たちの曖昧な関係はもっと長く続いていたかもしれません。
婚約に至るまでの経緯について教えてください!
婚約したのは、付き合って約1年が経った2023年9月です。当時、私がたまたま休暇を使ってアメリカに行くことになり、彼とLAで合流して1週間くらい旅行することになりました。そのとき、彼からプロポーズされました。そのときは「プロポーズ」なんていう雰囲気や前触れは何もなかったので、予想外の展開に驚きました。彼は、私が帰国した半年後から日本に留学していたのですが、留学先が島根県で、私は東京の企業で働いていたので、年に3回くらいしか会えませんでした。タイミングを考えたらプロポーズはその旅行が一番良かったのかなという気もします。
婚約後アメリカ移住に至るまで
会社を辞めてアメリカに戻ることになった経緯について教えてください!
私たちにとって最も理想のプランは、2人で日本に住むことでした。当時彼のインターン先の企業の日本支社に入ろうとするなど、真剣に検討していた時期もありました。しかし、ポジションが空かなかったり、日本での外国人ビザの手続きが非常に困難だったり、結局実現することができませんでした。
彼と2人で話し合い、最終的にはアメリカに住むことにしました。一番のきっかけは2024年大統領選挙です。バイデン政権でグリーンカードの手続きが簡略化されているのですが、これがトランプ政権になると申請が長期化するので、選挙前までにアメリカに入国する方法を探すことになりました。色々あるビザ制度の中で最短で、入国できるのが学生ビザだったので、そこからアーカンソー大学で1年間の大学院プログラムに応募するなど、準備を始めました。2024年2月に合格の通知を受け取り、7月に勤めていた企業を退社してアメリカに戻りました。
当初は、なんとしてでも日本の企業に留まってアメリカに住むことを考えており、一時期ニューヨーク支社に派遣してもらう話も出ていました。けれど、アメリカの大学を卒業している場合、日本での職務経験が5年以上ないとアメリカで働くことができないという制約があるため、結局会社を辞めて学生としてやり直すという選択肢を取らざるを得ませんでした。
最終的にはグリーンカードを取得する予定です。来週役所に結婚届けを提出して、そこから半年間かけて色々な書類手続きを行いますが、大学院を卒業するまでに終わればいいなと思っています。弁護士を通すので費用もかかりますし、同じアパートに住んでいる記録とか、共通の銀行口座の記録とか、自分たちで調べながら用意することもたくさんあります。
アメリカでの生活
2人の普段の過ごし方について教えてください!
彼は大学を卒業して、現在社会人です。日中は働いていますが、朝起きたら私が大学院の準備をしている間に朝ご飯やコーヒーを作ってくれて、お弁当も用意してくれます。キャンパスまでは車で送ってくれて、授業が終わるころには迎えにきてくれます。だいたい帰宅後は2人で夜ご飯を食べたり、映画を見たり、ゆっくり過ごします。たまに彼の実家に行ったり、彼のお兄さんを交えて遊んだりすることもあります。休日は、お互いアウトドアなのでハイキングなどアクティブに過ごします。
文化の違い
関係を築く上で大切なことはありますか?
相手に知ってほしいことは、なんでも言葉にして伝えることです。アメリカ人の彼にはそもそも日本のような「察する」文化がないので、自分が口にしないことを探ったり推測したりすることはありません。相手に知ってほしいことは全て直接伝える必要があるので「なんで察してくれないの?」は通じないということを肝に銘じて接することが大切です。
彼はものごとをなんでもストレートに伝えてくれるので、日本人である私にとっては、ありがたいなと思います。日本語という言語自体あまり直接的ではないので、人間関係で「推察する能力」が求められることも多いと思います。ときにはそれが喧嘩の火種になることもあるでしょう。だからこそ、彼がなんでもストレートに言ってくれるおかげで、ストレスフリーな関係性を築くことができています。
文化の違いで苦労したことについて教えてくさい!
私が休暇中にアメリカに行った際、彼の実家に滞在していましたが、一般的に日本では、交際相手の実家に泊まることはあまりないと思います。だから、私の親からすれば「本当に実家に泊まるの?」と心配だったそうです。逆に、彼が私の実家の近くまで来たときはホテルを取って滞在しましたが、彼の親からしてみれば「なんで実家の近くにいるのに、わざわざお金を払ってまでホテルに泊まるのか」「(彼は私の親に)受け入れられていないのだ」と認識にズレが生じることがありました。お互いの親は直接コミュニケーションが取れないので、感覚や細かいニュアンスの違いをお互い通訳しなくてはならなかったので、その点は難しいと感じました。
国際結婚に対するご両親の反応はいかがでしたか?
アメリカ人と結婚することに対して、特に何か言われたことはありません。むしろ、4年間アメリカの大学にいたので、なんとなくそうなることは想像していたようです。ただ、結婚することで私が会社を辞めることになってしまうことに抵抗があったと言います。けれど、結局は私自身が決めることなので、そこは折り合いをつけて会社を辞め、アメリカに戻ることになりました。
今後のプラン
将来の展望について教えてください!
彼とは「子どもができたら高校は日本、大学はアメリカに通わせたいね」や「将来は2人でビジネスを始めたいね」などこの先の未来についてよく話しています。
会社を辞めてアメリカに移動してきて、これからどんどん手続きが進み、もう後には引けません。田舎・都会どちらに住むか、日本・アメリカどちらで子育てするかなど、自分自身と相手の理想を事前に擦り合わせておく必要があると感じています。
ただ、彼はビザの手続きも将来のことも全部2人ごととして捉えていて、手続きに関する調べ物も率先して進めてくれるので、とてもありがたいです。
もし普通に大学を卒業して日本の企業で働き続けていたら、いずれは結婚してタワーマンションに住んで、猫を飼って、子どもは1人で……といった生活になっていたでしょう。それはそれで合っている人にとっては楽しいと思います。東京のような都会だからこそ得られたチャンスや出会いもたくさんありました。
しかし私にとっては、アメリカの生活で得られるものの方が、自分の人生を豊かにしてくれると、これまでの人生を振り返って気付きました。大きい家に住んで、大型犬を飼い、静かにゆっくりと過ごす……そんなアメリカののんびりとした生活が理想です。
この先、大変なこともたくさんあると思いますが、そういった困難も含め自分が選んだ人生を存分に楽しんでいきたいと思います。
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Mayu went to an American university immediately after graduating from high school in Japan and graduated in 2022. In order to marry her American partner whom she met at university, she quit her job at a Japanese company where she had worked for two years and returned to the United States as a graduate student in August of this year.
She is currently living a relaxed life with her partner while attending graduate school, and will soon begin the process of registering her marriage.
In this article, she will talk about the realities of an international couple, from how she met her partner and got engaged, to the fun and difficulties of living with a different culture, and the process of obtaining a green card, which is not easy!
About me
I am from Hokkaido and lived in Hokkaido until I graduated from high school. After graduating, I went on to the University of Arkansas in 2017, where I double majored in International Studies and African American Studies as an undergraduate, and minored in French. I graduated from undergraduate school in December 2021 and started my master’s program at graduate school in August of this year. I am currently majoring in marketing. What made me decide to go to an American university
I had always wanted to study abroad. After graduating from my local public high school, my desire to study abroad grew and grew, so I decided to go to an American university.
Why I chose the University of Arkansas
I hadn’t originally considered a university in a city on the West Coast or the East Coast. Of course, there was the cost factor, but above all, I chose the University of Arkansas because I thought, “If I’m going to go, I want to go somewhere I’ll never go to.” I was also looking for a high-level state university in the state, and I chose the University of Arkansas because it has a strong program in international relations.
How the two of you met
Please tell us about your first meeting!
I met my partner at a party at university. My classmate happened to bring his younger brother to the party, and that was my current partner. At the time, he was still in high school, so I thought of him as my friend’s younger brother, but after he entered university and started taking Japanese classes, we became close as I helped him with his homework. However, around that time, the coronavirus pandemic began and classes went online, and I took a leave of absence from university and was away from the United States for a year, so there was a period of two years when I wasn’t able to see him. I met him again in my last semester before graduating. We happened to meet at the bus stop on campus and were talking. He is a double bass player and he was looking for a pianist to play with, so I was the pianist. I think that’s when we started practicing together and we quickly became closer.
How did you start dating?
We actually started dating after I graduated from college and returned to Japan. After I returned, I was on the phone with him all morning and night. We talked for about six hours on weekends, and I felt like if we weren’t long distance, it wouldn’t be strange for us to be dating. However, we didn’t know what would happen in the future, so we just got along without clarifying our relationship.
One day, while I was on the phone with him, a colleague from my company at the time barged in and we all ended up having a video call. When the colleague asked him, “Do you have a girlfriend?” he replied, “Yes, I do.” At the time, I never thought it was about me, and I thought he had found a girlfriend in America. After that, when I was on the phone with him, I casually asked him, “Did you have a girlfriend?” and he said, “(I’m) your girlfriend.” That was the first time I realized that we were in a relationship. If a colleague hadn’t barged in and asked him at that time, our ambiguous relationship might have lasted longer.
Tell us about how you got engaged!
We got engaged in September 2023, about a year after we started dating. At that time, I happened to go to the United States on vacation, and we met up with him in LA and went on a trip for about a week. That’s when he proposed to me. At that time, there was no atmosphere or sign of a “proposal,” so I was surprised by the unexpected turn of events. He came to Japan to study abroad six months after I returned to Japan, but he was in Shimane Prefecture and I was working for a company in Tokyo, so we only got to see each other about three times a year. Considering the timing, I think that trip was the best time to propose.
From engagement to moving to the United States
Please tell us about the circumstances that led to you quitting your job and returning to the United States! The most ideal plan for us was to live in Japan together. At the time, we were seriously considering joining the Japanese branch of the company where he was interning. However, there were no positions available, and the foreign visa procedures in Japan were very difficult, so we were unable to make it happen.
After discussing it together, we decided to live in the United States. The biggest trigger was the 2024 presidential election. The Biden administration has simplified the green card procedures, but if the Trump administration takes over, the application process will be longer, so we decided to look for a way to enter the United States before the election. Of the various visa systems, the shortest way to enter the country was a student visa, so we started preparing by applying for a one-year graduate program at the University of Arkansas. We received notice of acceptance in February 2024, and in July we left the company we were working for and returned to the United States.
Initially, we were thinking of staying with the Japanese company and living in the United States at all costs, and there was even talk of being sent to the New York branch for a while. However, if you graduated from an American university, you cannot work in the US unless you have at least five years of work experience in Japan, so I ended up having to quit my job and start over as a student.
I plan to eventually get a green card. Next week, I will submit my marriage registration to the city hall, and then I will spend six months going through various paperwork, but I hope to finish it before I graduate from graduate school. It will cost money to go through a lawyer, and there are many things we need to research and prepare ourselves, such as records of living in the same apartment and records of joint bank accounts.
Life in America
Please tell us about your daily life!
He graduated from university and is currently working. He works during the day, but when he wakes up in the morning, he makes me breakfast and coffee while I prepare for graduate school, and prepares my lunch. He drives me to campus and picks me up when class is over. After coming home, we usually eat dinner together, watch movies, and spend a relaxing time. Sometimes I go to his parents’ house and hang out with his older brother. On our days off, we are both outdoorsy, so we spend our time hiking and doing other active things.
Cultural differences
Is there anything important in building a relationship?
It is important to tell the other person everything you want them to know in words. He is an American, so he doesn’t have the culture of “guessing” like in Japan, so he doesn’t try to find out or guess what you don’t say. You need to tell the other person everything you want them to know directly, so it’s important to remember that saying “Why don’t you guess?” won’t work.
He tells me everything directly, which I’m grateful for as a Japanese person. The Japanese language itself is not very direct, so I think that in human relationships, the ability to “guess” is often required. Sometimes that can be the source of a fight. That’s why we can build a stress-free relationship thanks to him telling me everything directly.
Tell me about any difficulties you’ve had due to cultural differences!
When I went to America on vacation, I stayed at his parents’ house, but I don’t think that in Japan, people usually stay at their partner’s parents’ house. So my parents were worried, “Are you really going to stay at your parents’ house?” On the other hand, when he came near my parents’ house, I booked a hotel and stayed there, but his parents thought, “Why would he pay money to stay in a hotel when he’s near his parents’ house?” and “He’s not accepted by my parents.” There was a difference in our perceptions. Since our parents couldn’t communicate directly, we had to translate for each other the differences in our feelings and subtle nuances, which I found difficult.
How did your parents react to your international marriage?
They never said anything in particular about me marrying an American. Rather, since I had been to college in the United States for four years, I guess they had imagined that it would happen. However, he said that he was reluctant to marry an American because it would mean that I would have to quit my job. However, since it was ultimately my decision, we came to terms with that and decided to quit my job and return to the United States.
Future plans
Please tell us about your future prospects!
I often talk to him about the future, such as “When we have children, I want them to go to high school in Japan and college in the United States” and “We want to start a business together in the future.”
I left my job and moved to America, and the process is progressing and I can’t turn back now. I feel that it is necessary to align my ideals with my partner’s in advance, such as whether to live in the countryside or the city, and whether to raise my children in Japan or America.
However, he sees the visa procedures and future as something that only we have to do together, and he takes the initiative in researching the procedures, which I am very grateful for.
If I had graduated from college normally and continued working for a Japanese company, I would have ended up getting married, living in a tower apartment, having a cat, and raising a child alone… I think that would be fun for the right person. There were many opportunities and encounters that I was able to have because I was in a city like Tokyo.
However, looking back on my life so far, I realized that for me, the things I can get from living in America enrich my life more. Living in a big house, raising a large dog, spending my time quietly and leisurely… that kind of laid-back life in America is ideal.
I think there will be many difficult things in the future, but I want to enjoy the life I have chosen to the fullest, including those difficulties.
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